— 開発日記 / the honest version

黒い鏡の、つくりかた。

これは、きれいな設計書じゃない。
詰まった夜と、消えた付箋と、
鉛筆の描き味に本気で悩んだ話。
——BMBoardを作った本人の、裏話。

個人開発 · ひとり 滋賀 · 琵琶湖のそば 2025〜 Live bmboard.studio ↗

Netflixを見てたら、作りたくなった。

「ブラックミラー」を見ていた夜、ふと引っかかった。なんでデザイナーとエンジニアは、同じ画面を見てないんだ?

デザイナーはFigmaで考える。エンジニアはターミナルで考える。ふたつの思考は、別々のツールの上にある。そのあいだに落ちてるアイデアがある気がして、気づいたら手を動かしていた。

名前は不穏。ロゴは、笑ってる。

「黒い鏡」なんて名前をつけた。ブラックミラーが映すのは、たいてい不穏な未来だ。
なのにアイコンは——緑のスマイルにした。

矛盾してる? いや、これが言いたかった。この鏡を覗いたら、笑い返してくる。テクノロジーは、冷たくなくていい。緑は、生命の色で、琵琶湖の色だ。

WHY黒い鏡は、あなたを映す。だからせめて、笑っていてほしかった。
the black mirror, smiling back
名前は黒い鏡。でもマークは、笑っている。
道具は、笑っていていい。

鉛筆の「描き味」に、本気で沼った。

キャンバスツールの心臓は、鉛筆だと思っている。だから描き味だけは絶対に妥協しなかった。

線を全部なめらかに丸めると、カクッとした角が消えて気持ち悪い。かといって全部そのまま直線でつなぐと、手描きのやわらかさが死ぬ。

詰まった「丸めすぎ」と「カクカク」の間で、何日も行ったり来たり。正解が見えない。

たどり着いたのは、角は角として検出しつつ、中間点でなめらかにつなぐやり方。「意図した角」は残して、「手ブレ」だけ整える。ここは今も、勝手に触らない聖域にしている。

カクカク 丸めすぎ ちょうどいい 角は残す・手ブレだけ整える
全部丸めても、全部そのままでもダメ。角だけ見分ける。

付箋が、消える。

ある日バグに気づく。テキストや付箋を編集して、ポップアップを閉じると——書いた文字が、消える。思考ツールで一番やってはいけないやつ。

詰まった「保存したはず」が保存されてない。ユーザーの言葉が、消えていく。

原因は、閉じる瞬間に保存が間に合っていなかったこと。ポップアップを閉じる3つのタイミングで確定→即保存を必ず走らせるようにして、ようやく止血した。

学び派手な新機能より、「消えない」の一点。信頼はこういう地味な所で決まる。
書いた 閉じたら消えた 閉じる瞬間に即保存
閉じる3つのタイミングで「確定→即保存」を必ず走らせて、止血。

フレームワーク、ぜんぶ捨てた。

ライブラリなし。ビルドなし。HTMLファイル、たったひとつ。ブラウザだけで動く。サイズは削って499KB。

0
dependencies
1
html file
499KB
全部込み

なぜそこまで? 「依存は、いつか裏切る」から。誰かのパッケージが更新を止めた瞬間に壊れる道具を、10年使い続けたくなかった。

学び機能を削るのは、足すより10倍むずかしい。「1ファイルで全部」という制約が、逆に自分を鍛えてくれた。

キャンバスに、魔法(spell)をかける。

テキストボックスに $sakura と打つと、桜が舞う。これがTerminal Magic。描くことと、命令することが、同じ場所で起きる。

しかも呪文は、JSONを貼るだけで増える。AIに「こう動かしたい」と説明すれば、動くJSONを書いてくれる。作った呪文はSNSで配れる。遊びが、そのまま拡張機能になった。

$sakura 桜が、舞う
テキストに $sakura と打つ。それだけで、キャンバスが動く。

スマホの「複製」で、事故った。

最初、長押しで複製できるようにした。……が、スクロールや選択と誤爆しまくる。意図しないコピーが増えて、逆にストレス。

詰まった「便利にしたつもり」が、一番イライラの原因だった。

結局、長押しはやめてヘッダーにDUPボタンを1個置いた。押したいときだけ、確実に複製。地味だけど、こっちが正解だった。

Product Huntに、放った。

滋賀から、ブラウザひとつで、世界へ出した。反応が返ってきた中で、一番うれしかったのはこれ。

こんなツールを待っていた。

機能の数じゃなくて、「同じキャンバスで話せる」という体験そのものが刺さったんだと思う。ブラウザ拡張(Black Mirror Browser)の中でも動くようにして、居場所も増やした。

Black Mirror Board — designer's intuition × hacker's command
Black Mirror Board — designer's intuition × hacker's command

まだ、作り続けてる。

v1.3で、GIFキャンバス・整列・テンプレート・パレット・自動テーマが増えた。機能は増えたけど、哲学は1ミリも変えてない。依存ゼロ、HTMLひとつ、ブラウザだけ。

琵琶湖のそばで、このツールを毎日自分で使いながら、直している。作り続けるのは、まだ届いてない人がいるからだ。

白紙が、笑って待ってる。

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木下 貴博 — 木下スタジオ / 滋賀 琵琶湖

書いた人 — 木下 貴博 / Takahiro Kinoshita

木下スタジオ(kinoshita studio)代表・木下貴博。滋賀・琵琶湖のそばで、デザインも開発もひとりでやってます。
BMBoard・Ateli.er・KODOCO を個人開発。プロフィール → / きれいな方の物語も読む →