Netflixで「ブラックミラー」を見ていた夜、ふと思った。
同じ画面を見ていないのか。」
デザイナーはFigmaで考える。レイヤー、コンポーネント、整列。
エンジニアはターミナルで考える。コマンド、出力、構造。
ふたつの思考様式は、別々のツールの上にある。
その間に落ちているアイデアがある気がした。
ドラマ「ブラックミラー」は、テクノロジーと人間の関係を問う。
画面の向こうに映るのは、自分自身だ。
何かを描くとき、画面に映るのは思考そのものだ。
だからBlack Mirror Boardと名付けた。
名前は「黒い鏡」。
ブラックミラーが映すのは、たいてい不穏な未来だ。
でも、このボードを覗くと——
緑のスマイルが、こちらに笑い返してくる。
だからせめて、笑っていてほしかった。
ロゴにしたのは、飾りのない緑の笑顔。
緑は、生命の色。琵琶湖の色。親しみの色。
名前が警告するテクノロジーの冷たさを、
マークがそっと否定する。道具は、笑っていていい。
設計でこだわったのは、シンプルさだ。
フレームワークなし。ライブラリなし。HTMLファイルひとつ。ブラウザだけで動く。
なぜか。余計なものが入ると、思考が重くなる。
道具は軽いほうがいい。白紙に近いほうがいい。
キャンバスに描いた図形が、
ターミナルのコマンドに応える。
コマンドを打つと、キャンバスが動く。
描くことと、動かすことが、同じ場所で起きる。
デザイナーがコードを書かなくていい。
エンジニアがデザインツールを開かなくていい。
ふたりが同じキャンバスを見ながら、同じ言語で話せる。
それが魔法だと思う。
描くこと(デザイナーの直感)と、打つこと(ハッカーの命令)。
ふたつが、同じ一枚の黒い鏡の上で交わる。
テキストボックスに $sakura と打てば、桜が舞う。
JSONを貼れば、新しい呪文(spell)が増える。
AIに「こう動かしたい」と言えば、動くJSONが返ってくる。
コードを書かずに、キャンバスは無限に広がる。
結局これは、あなたの何を軽くするのか。
機能を削ることは、追加することより10倍難しい。「これも必要かも」という誘惑に負け続けると、いつの間にかファイルサイズが膨らむ。499KBというサイズは、削った結果だ。
「1ファイルで全部入れる」という制約が、
依存を持ち込まない習慣を鍛えてくれた。
ランタイムコストへの敏感さ、ブラウザAPIの理解の深さ——
全部、この制約から生まれた。
琵琶湖のそばで、このツールを毎日使いながら作り続けた。
v1.3で、GIFキャンバス・整列機能・テンプレート・パレット・自動テーマが加わった。
機能は増えたが、哲学は変わっていない。
依存ゼロ。HTMLひとつ。ブラウザだけで動く。
Product Huntに出た。世界中のデザイナーとエンジニアに届いた。
「こんなツールを待っていた」という言葉が、一番の報酬だった。
滋賀から、ブラウザひとつで、世界へ。