BRANDING / LOGO — 01
Design — 木下スタジオ / 木下貴博(滋賀・琵琶湖)
空き家の相談窓口のロゴ ── 2案の提案
— Overview
「不動産会社のロゴ」ではなく、
「相談窓口のロゴ」として。
沖縄で新しく空き家の相談窓口を始める不動産会社への、ロゴとサインの提案。ご要望は「緑〜黄緑」「50〜80代の方に向けて」「優しく寄り添い傾聴する」、そして看板・名刺・のぼり・Web・車両への展開まで見たいということでした。形を描く前に沖縄の住まいを調べ、社名の3文字から性格の違う2案を起こし、どちらも白黒の1色から看板の実物大まで確かめています。
— Logo / Sign / Mockup

01 — 社名・ロゴ/名刺に刷ったときのイメージ(上=案A 重なる屋根・下=案B 開いている家)

02 — 看板・サインの展開(濃い緑=案A/明るい緑=案B)

03 — 街に立ったときの姿(野立て看板・外壁の光る看板・のぼり旗・受付のサイン壁)
— 01 調べてから描く
ロゴを描く前に、沖縄の住まいを調べました。沖縄県の空き家率は9.35%で全国46位、決して多くはありません。一方で、一戸建てに住む高齢者のみの世帯が約7万世帯(一戸建て世帯の約3割)あります。
この窓口が向き合うのは、いま空いている家というより、これから空き家になるかもしれない家の、いま住んでいる方。ターゲットが「50〜80代」である理由も、ここで腑に落ちました。
沖縄の戸建ては8割以上が鉄筋コンクリート造で、
屋根は平らなものが多い。
家のマークの多くは内地の急な三角屋根です。それをそのまま置くと、地元の家とは違う形になってしまう。「家だ」と分かりながら、沖縄で浮かない線を探すことを、2案共通の条件にしました。
— 02 案A
社名の3文字を、切らずに一本の稜線としてつなぎました。両端のTが柱、中央のBが二枚の屋根の重なりです。空き家は、手放したい方と住みたい方の二人がそろって、はじめて動きます。屋根を一枚ではなく二枚重ねたのは、その二人を一つの形にするため。御社は、その二枚が重なる場所そのものだと考えました。
ゆるやかな反り——三角にせず、赤瓦の屋根の反りや、集落を少し離れて見たときの家並みの線に近づけた
手で引いた線——柱の先をわずかに細く抜いた。「優しく寄り添い傾聴する」は、形の意味より線のわずかな揺れのほうが伝わる
太い線——名刺の小さなマークでも1色で潰れない。遠くからぼかして見ても「家の形」だけが残る
— 03 案B
屋根は一本の線で、片側だけに流しています。閉じていません。壁がなく、柱と梁と庇だけでできた形です。家を売る・貸すと決めた方が来る場所ではなく、まだ決めていない方が、とりあえず話をしに来られる場所。そう考えると、扉のある閉じた家より、軒だけがある開いた場所のほうが近いと思いました。
雨端(あまはじ)・縁側——沖縄の住まいでいう、内と外のあいだの軒下を形にした
耳の形——中央のBは二つの輪。向かい合う二人であり、聴く形。「傾聴」というご要望に、口ではなく耳を置いた
骨組みだけ——屋根の面を描かないので、瓦でもコンクリートでも当てはまる。屋根の線は「これから」の右上へ逃がした
— 04 色の設計
色は二段にしました。濃いほうが「これまで」、明るいほうが「これから」。地は白ではなく生成りです。不動産のロゴは白地に緑が多く、清潔ですが少し冷たくなります。地の色そのものを温かくするほうが、相談に来られる方の気持ちに近いと考えました。
苔緑 #3F6B47
これまで
信頼・落ち着き。看板やサインの地はこの濃い緑を使う。
若草 #9BC15C
これから
やわらかさ・入りやすさ。マークの柱など、アクセントに置く。
生成り #F6F1E6
地の色
白より温かく、冷たくしない。名刺や印刷物の地に。
サインや看板は、すべてシンプルに、少ない要素で最大の効き目が出ることを重視しました。薄いグリーンは離れると見えにくく、印刷物としても淡すぎて中途半端になるため、看板の地はキーカラーの濃い緑に揃えています。黒一色・白抜きでも成立することを確かめています。
— 05 展開
「展開まで見たい」というご要望に答えるため、線の太さを実際の大きさに換算しました。ロゴは画面の上ではなく、名刺や車のドアや道路沿いの看板の上で見られるからです。
| 使う場所 | 実寸 | 案A 線幅 | 案B 線幅 |
|---|---|---|---|
| 名刺の小さなマーク | 12mm | 0.87mm | 0.62mm |
| 社用車のドア | 300mm | 21.8mm | 15.6mm |
| 丸看板 | φ900mm | 65.5mm | 46.8mm |
のぼり旗は縦組みの専用版——縦長の布に横組みを置くと小さくなるため、文字を縦に組み直した
横長の看板は2つの組み方——文字・マーク・英字を並べる版と、マークを大きく端に置く版
丸いサイン——マークと英字だけに絞った版も用意した
— 06 弱いところ
提案には、それぞれの案の弱いところと、その手当てを最初から書きました。選ぶ側が後から気づくより、先に知っているほうが判断しやすいからです。
案A の弱いところ
屋根に見えすぎる
平屋根にお住まいの方には、ご自身の家と結びつきにくいかもしれない。→ 断定的な三角にせず、反りで逃がした。刺繍などで5mm以下になる用途には、中央の一文字だけの版を用意する。
案B の弱いところ
分かるまで一拍かかる
線が案Aより約3割細く、初見の分かりやすさも案Aが上。→ 看板とのぼりは線を太くした専用の版を合わせて用意する。そのかわり、三角屋根だらけの同業と並んでも見間違えられない。
— Studio
木下スタジオ(Kinoshita Studio)は、滋賀県・琵琶湖を拠点に活動するデザイナー木下貴博のスタジオです。Webデザイン・UX/UIデザイン・アートディレクション・グラフィックデザインまで、一人で設計から制作・ディレクションを一貫して担当します。
本案件は ロゴデザイン · サイン計画 の提案です。「届けたい体験と届いている体験のズレを揃える」を核心に、地域の企業・全国のクライアントのビジョンを体験に翻訳しています。