Product Development — Case Study / Experience Translation
Meal Planner / Local-first — 木下スタジオ / 木下貴博(滋賀・琵琶湖)
— Origin / このプロダクトの問い
このプロダクトは
「なぜ、夕食を決めるだけでこんなに疲れるのか?」
という問いから始まりました。
クックパッドは選択肢を増やした。しかし必要だったのは「今日の答え」だった。
01 — Problem
仕事から帰って、疲れた体で「今日何食べる?」と考える時間。クックパッドを開けば何万ものレシピがある——しかしそれは「何を作るか」という決断をより複雑にするだけだ。選択肢が増えるほど決断疲れが起きる。これを心理学では「決定疲労(Decision Fatigue)」と呼ぶ。
献立の問題は「レシピが見つからない」のではない。「何を作るか決める認知負荷が毎日発生する」ことだ。好きな料理は決まっている。家にある材料も大体決まっている。それなのに毎日ゼロから考えている——このズレが、日々の疲弊を生んでいた。
— 課題 01
選択肢の洪水が決断を疲弊させる。クックパッドに「今日の夕食」と入力しても5万件のレシピが出てくる。多すぎる選択肢は「選ぶ喜び」ではなく「選ぶ義務」を生む。
— 課題 02
好きな料理を繰り返す設計がない。家庭の食卓は「好きなもの」を繰り返すリズムで成り立っている。しかしどのアプリも「新しいレシピを発見させる」ことに最適化されている。
— 課題 03
「今日の文脈」を読まない。疲れた日・元気な日・家族が多い日・一人の日——献立はその日の文脈によって変わる。しかし情報サービスはその文脈を読まない。
— 課題 04
プライバシーへの不安。「この家族が何を食べているか」というデータはクラウドに上げたくない。食事はプライベートな行為だ。データはデバイスの外に出てほしくない。
02 — Insight
日本の家庭料理を観察すると、実は2週間でローテーションする料理は10〜15品程度だということがわかる。カレー・から揚げ・パスタ・生姜焼き——「また同じ」ではなく「また食べたい」という料理がある。日めくり献立はこの「お気に入りを中心に据える」という洞察から設計された。
お気に入りの献立を登録し、優先度と頻度を設定する。週の始まりにアプリが「今週のリズム」を提案する——選ぶのではなく受け取る。もちろんその日の気分で変更できる。しかし「考えなくていい日」が増えることで、台所に向かうエネルギーが変わる。
— Persona Design
3ペルソナの共通課題:「献立決めの認知負荷から解放されたい」。「新しいものを発見する」ではなく「好きなものを繰り返す自由」が核心。
— Customer Journey
週初めに一度だけ考えれば、あとは「今日はこれ」を受け取るだけ。決断疲れをゼロにする設計。
03 — Experience Strategy
日めくり献立のExperience Strategyは4つの軸——無決断(No-decision)・リズム(Rhythm)・安心(Comfort)・プライバシー(Privacy)。「新しいものを発見させる」設計を完全に排除し、「今日の答えを渡す」設計に純化した。
— 01
NO-DECISION
「今日何にする?」という問いに、アプリが答える。ユーザーは選ばない——受け取る。決断疲れが消えることで、台所への一歩が軽くなる。
— 02
RHYTHM
お気に入りを軸に、週単位のリズムが生まれる。「月曜はカレー・木曜は生姜焼き」というパターンが習慣化すると、食卓が「場所」になる。
— 03
COMFORT
好きなものを繰り返す喜び。「また同じ」ではなく「また食べたい」。家庭料理の本質は「安心できる味」にある——その設計を技術が支える。
— 04
PRIVACY
食事データはデバイスの中だけ。アカウントなし・クラウドなし。「家族が何を食べているか」はプライベートな情報だ——localStorage だけで完結する。
04 — Solution Design
日めくり献立の設計は「引き算」だ。献立管理アプリが持つべきでない機能——レシピ検索・カロリー計算・食材在庫管理——をすべて削除した。残るのは「お気に入りの登録」と「今日の答えを出すこと」だけだ。
— Favorites First
まず好きな料理を登録する。優先度(高・中・低)と頻度(週1〜週2・隔週)を設定するだけ。「新しい料理を発見する」のではなく「すでに好きな料理を整理する」ことがスタートポイント。
— Daily Reveal
日めくりカレンダーのように、今日の献立が一枚めくれて現れる。週単位で自動配置されたお気に入り献立が、何も考えなくても「今日の答え」として目の前に現れる。
— Local-first Storage
すべてのデータはlocalStorageに保存される。サーバーなし・クラウドなし・アカウントなし。「何を食べているか」という家族のプライベートなデータは、デバイスから出ない。
— Rhythm Memory
使い続けるほど、アプリが「この家族の週のリズム」を学習する。月曜の重さ・金曜の明るさ・週末の余裕——文脈を読んだ献立配置が、時間とともに精度を上げる。
05 — Results
日めくり献立を使い始めてから、夕食の準備に向かうエネルギーが変わった。「何作ろう」という問いが消え、「今日はカレーの日だ」という安心感で台所に立てるようになった。献立の設計が、食卓の文化を変えた。
0— 毎日の献立決め時間
週初めに一度だけ設定すれば、あとは「今日の答え」を受け取るだけ。決断疲れがゼロになる。
∞— お気に入りの繰り返し回数
同じ料理を繰り返すことが「豊かさ」になる。好きな料理のリズムが、食卓を「場所」に変える。
1— ファイル数
1HTML・依存ゼロ・アカウントなし。食事データは完全にデバイスの中だけ。プライバシーが守られる。
— Studio Note
日めくり献立は、木下スタジオが「生活の体験翻訳」として設計したプロダクトです。「献立を考える認知負荷」というズレは、誰もが毎日経験しているにもかかわらず、解決されていなかった。
「好きなものを繰り返す自由」——この命題が、設計のすべてを決めました。クックパッドとは逆の方向へ、引き算だけで設計したプロダクトです。