— Chapter 02-3 · Material
青は、落ちるから美しい。
インディゴは、染料のなかでもかなり変わり者です。 繊維の内側まで染まらず、表面にしか定着しない。 だから穿けば穿くほど、擦れた部分から青が剥がれていく。 ——ジーンズが「育つ」と言われる理由は、ここにあります。
インディゴという染料
インディゴ(indigo)はもともと、インド原産の植物「インド藍(Indigofera tinctoria)」から採れる天然染料でした。 日本にも古くから「タデ藍(蓼藍)」があり、 徳島の阿波藍が江戸時代の主力でした。
1897年、ドイツの化学者アドルフ・フォン・バイヤーが インディゴの化学合成に成功。以後、ジーンズに使われるインディゴは ほぼすべてこの合成インディゴです。
ロープ染色 — なぜ表だけ染まるのか
ジーンズの縦糸は、ロープ染色という独特の方法で染められます。 何百本もの縦糸を1本の太いロープにまとめ、インディゴの染液に10秒ほど浸しては空気にさらす。 これを6〜12回繰り返します。
なぜ繰り返すか——インディゴは空気に触れて酸化することで発色するから。 染液のなかでは黄緑色ですが、引き上げて空気にさらした瞬間、青になる。
色が落ちる、その仕組み
ジーンズを穿くと、膝・腿・財布の角・後ろポケットなど、 特定の場所が集中的に擦れます。 その摩擦でインディゴの「青い皮膚」が剥がれ、 中の白い芯が露出する——これがフェード(色落ち)です。
| ヒゲ(Whiskers) | 腿の付け根に、ヒゲのように放射する白い筋 |
|---|---|
| ハチノス(Honeycomb) | 膝裏の、蜂の巣状の色落ちパターン |
| アタリ | 縫い目やポケットの縁に、白く浮き上がる凹凸 |
| 縦落ち | 糸のムラが、履き込みで縦方向の筋になって現れる現象 |
洗う? 洗わない? 問題
デニムマニアのあいだで何十年も続いている論争です。 「色落ちを美しく出すには、洗わずに履き続けろ」派と、 「衛生と型崩れ防止のために、定期的に洗え」派。
現代のスタンダードな答えは、「ひと月に一度、裏返しで中性洗剤、陰干し」。 リーバイスCEOは「自分は一年洗わない」と発言して物議を醸しましたが、 ——まあ、個人の自由です。
「ワンウォッシュ」「リジッド」「ノンウォッシュ」
| リジッド(Rigid) | 未洗い・糊つきの状態。硬い。最初は自分で縮めて穿き始める |
|---|---|
| ノンウォッシュ(Non-wash) | リジッドとほぼ同義。メーカーによって呼び分け |
| ワンウォッシュ(One-wash) | 一度だけ洗って縮ませた状態。買ってすぐ穿ける。サイズが安定 |
色落ちを最大限楽しみたい人はリジッド。 サイズの不安定さが嫌な人はワンウォッシュ。 これは好みの問題で、優劣ではありません。