— Chapter 02-2 · Material
織りの、右か左か。
デニムは綿を縦横に交差させた「綾織り(ツイル)」です。 どちらに斜めの線が走るかで、風合いも色落ちも変わります。 そしてもうひとつ——セルヴィッジと呼ばれる、 耳に赤い線が入るあの生地の正体も、ここで片付けます。
綾織り(ツイル)とは
綾織りは、縦糸(タテ)と横糸(ヨコ)を2本飛び・3本飛びで交差させる織り方。 交差点がずれて斜めの線が出るのが特徴で、これを綾目と呼びます。
デニムでは一般に3/1綾(縦糸が3本、横糸が1本ごとに出る)。 だから表はインディゴの縦糸ばかりが見え、裏は白い横糸が見える。 ジーンズの裏地が白っぽく見えるのは、このためです。
右綾・左綾・ブロークン
綾目の走る向きで、デニムは3種類に分かれます。
| 右綾(Right-hand Twill) | 斜線が右上がり(/方向)。Levi's の標準。硬めで、色落ちがクッキリ出る |
|---|---|
| 左綾(Left-hand Twill) | 斜線が左上がり(\方向)。Lee が得意。柔らかく、色落ちはフェード寄り |
| ブロークン(Broken Twill) | 右と左を交互に組み、ねじれを相殺。Wrangler が1964年に発明 |
セルヴィッジ(Selvedge)とは
セルヴィッジ=Self-Edge(自己完結した耳)の略。 旧式のシャトル織機で織ると、生地の両端が ほつれないように折り返された状態で仕上がります。これが「耳」です。
多くの場合、この耳に赤い糸が1本入っている。 ジーンズの裾をロールアップしたときにチラリと見える、あの赤線。 ——それが、セルヴィッジデニムの「証拠」です。
シャトル織機 vs 革新織機
1950年代、アメリカの工場は生産効率のため革新織機(プロジェクタイル織機)に移行しました。 織幅は広く(約150cm)、速度は数倍。大量生産には理想的です。
しかし、一本一本の糸をゆっくりと打ち込む旧式のシャトル織機には、 独特のムラと弱いテンションがあります。 これが、履き込んだときの「縦落ち」「色のゆらぎ」を生む。
| シャトル織機 | 旧式。幅狭。遅い。ムラ・縦落ち・耳(セルヴィッジ)が出る |
|---|---|
| 革新織機 | 現代式。幅広。速い。均一で、大量生産向き。耳なし |
日本のシャトル織機
アメリカが捨てた旧式シャトル織機(主に豊田自動織機 G3型)を、 日本——特に岡山県児島の職人たちは 黙々と使い続け、整備し、改良してきました。
結果として、21世紀の「本物のセルヴィッジデニム」は、ほぼ日本製です。 Momotaro、Oni、Pure Blue Japan、Iron Heart、SugarCane、Studio D'Artisan—— いずれも児島のシャトル織機なしには成立しない。