E flat は、AIツール(Midjourney)で生成したコンセプトプロダクトだ。薬のカプセルをモチーフに、透明なボディの中に精密な電子部品が透けて見える。実在しないこのプロダクトを通して、私は「音を飲む」という体験を、形だけで伝えられるかを探った。
出発点:カプセルとイヤホンの間で
イヤホンは耳に入れるもの、カプセルは口に飲み込むもの。本来まったく別の文脈にある二つを、ひとつのフォルムの中で重ねたらどうなるか。E flat は、その問いから生まれた架空のプロダクトだ。「音を飲む」という、存在しない体験コンセプトを起点に、形だけで成立させることを目指した。
設計の核心:医療的フォルムと、可視化された音響部品
透明なボディの中に、精密な電子部品をあえて見せる。これは「音を飲む」というコンセプトを、医療的なフォルムと音響部品の可視化という二つの言語で同時に語るための選択だった。カプセルが持つ清潔さ・服薬の作法と、内部に詰まったテクノロジーの密度。相反する印象を一つの透明な殻に閉じ込めることで、見る人の中に「これは何だろう」という宙づりの感覚を生みたかった。
機能の説明をひとつも添えずに、
「音を飲む」という体験を、形だけで信じさせられるか。
探索:AI生成ビジュアルを、思想の伝達に使う
このプロジェクトでもう一つ確かめたかったのは、プロダクトデザインにおけるAI生成ビジュアルの使いどころだ。Midjourney は、頭の中にしかなかったフォルムを、試作の手間なく一気に質感まで立ち上げてくれる。試したのは、それを単なる絵の生成で終わらせず、コンセプトモデルとして思想を伝える媒体にできるか、という点だった。
学び:実在しないものが、体験を語れるか
E flat は製品ではない。けれど、形と質感だけで「音を飲む」という未知の体験を想像させられたなら、それはコンセプトモデルとして十分に機能している。AI生成は、完成品を作る道具であると同時に、まだ存在しない体験を先回りして見せる思考の道具になりうる——その可能性の手触りを、このプロジェクトで掴んだ。