音楽制作ツール「Makafushigi」のUIデザイン研究。ファイル管理・プロジェクト管理・チーム共有という3つの層を、DAW(デジタル音楽制作ソフト)的なインタラクションと組み合わせ、ひとつのクラウドUIとして設計し直した。あわせてダークモード対応のデザインシステムも並行して開発している。
出発点:制作の道具が、管理の道具に負ける瞬間
音楽を作る人を見ていて、いつも引っかかっていたことがある。作ることに集中したいのに、ファイルを探す・バージョンを確認する・誰かと共有する、という「制作以外の作業」に手数が奪われていく。データはローカルとクラウドに散らばり、最新版がどれか分からなくなる。道具が、制作の邪魔をしてしまう瞬間だ。Makafushigi は、その手数を削るところから設計を始めた。
設計の核心:3層を、ひとつの面で扱う
整理の軸として置いたのは、ファイル管理・プロジェクト管理・チーム共有という3つの層だ。普通ならそれぞれ別画面に分かれてしまう機能を、Makafushigi ではできるだけ同じ面の上で行き来できるようにした。ファイルはプロジェクトに属し、プロジェクトはチームに開かれている——その入れ子の関係を、画面遷移ではなく深さの移動として感じられるようにしたかった。
道具は、機能の数ではなく、手数の少なさで信頼される。
——制作に戻るまでの距離を、できるだけ短く。
DAW的なインタラクションを、クラウドに持ち込む
音楽を作る人にとって、DAWの操作感はすでに身体に染み込んでいる。だからクラウドUIをゼロから発明するのではなく、すでに馴染んでいるDAW的なインタラクションを、クラウドの文脈に翻訳して持ち込む方針を取った。学び直すコストを払わせない。新しい場所でも「いつもの手つき」で動けることが、ツールへの安心につながると考えている。
並行して育てる、ダークモードのデザインシステム
制作は、長時間・夜・薄暗いスタジオでも行われる。だからダークモード対応は後付けのオプションではなく、最初から前提に置いた。色・余白・コントラストのルールをデザインシステムとして言語化し、ライトとダークの両方で破綻しないよう並行して育てている。同じコンポーネントが、明るい場所でも暗い場所でも同じ意味を伝えられること。それが信頼の土台になる。
学び:UXは「機能の地図」ではなく「集中の保護」
このプロジェクトを通じて改めて思ったのは、制作ツールのUXは機能を並べた地図を作ることではない、ということだ。本質は、作り手の集中をどれだけ守れるかにある。管理は静かに背景へ退き、制作だけが手前に立つ。その関係を設計できたとき、ツールはようやく道具になる。