「天ぷら」というテーマを、幾何学的な抽象として再解釈したコンセプトグラフィックの実験。円と矩形の組み合わせだけで食材の構造を翻訳し、背景色やタイポグラフィとの関係によって、その意味がどう変わっていくのかを4パターンで検証した。
出発点:なぜ「天ぷら」を幾何学に置き換えるのか
天ぷらは、衣の中に素材が隠れている料理だ。見た目はどれも似た揚げ色なのに、中身はえび、なす、かぼちゃと、まるで違う。表層は同じでも、内部の構造が違う——この構造を、写真でもイラストでもなく、最小限の幾何学figureで表せないか。それがこの実験の出発点だった。具象を捨てたときに、何が残り、何が伝わるのかを確かめたかった。
翻訳:円と矩形で、食材の構造を書き直す
使ったのは、円と矩形という最も基本的な二つの形だけ。丸みは素材の柔らかさや断面を、矩形は衣の縁取りや皿の構造を担う。えびの反り、なすの縦の線、かき揚げの集合——それぞれを円と矩形の比率と配置に翻訳していく。具体的な「天ぷらの絵」を描かないことで、かえって構造そのものが立ち上がってくる感覚があった。
形は、それ単体では意味を持たない。
——置かれた文脈の中で、はじめて何かを語り出す。
検証:背景色とタイポで、意味は4通りに揺れる
同じ円と矩形の組み合わせでも、背景色とタイポグラフィを変えると、受け取られる意味がまるで変わる。暖色の地に置けば食欲や温度を連想させ、無彩色の地に置けば工業的な記号に見える。書体を細くすれば静けさが、太くすれば主張が乗る。この「揺れ」を4パターンで並べて検証し、形と文脈の関係を観察した。
学び:意味は、形ではなく関係に宿る
4パターンを並べて見えてきたのは、意味は形そのものではなく、形と背景・文字・余白との「関係」に宿るということだ。同じ円が、ある文脈では食材になり、別の文脈ではただの点になる。デザインとは形を作る仕事だと思われがちだが、本当に設計しているのは形と形のあいだの関係なのだ——天ぷらという身近なテーマが、そのことを静かに教えてくれた。
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