手描きの菫 — Ateli.er のロゴイラスト

— 開発日記 / the honest version

静かな中庭の、つくりかた。

これは、きれいな設計書じゃない。
数字を消す怖さと、消えたコレクションと、
「まだ途中でいい」に辿り着くまでの話。
——Ateli.erを作った本人の、裏話。

個人開発 · ひとり 滋賀 · 琵琶湖のそば no algorithm atelistudio.com ↗

Spotifyを開くたび、少し疲れた。

便利なのはわかってる。でも、誰かのアルゴリズムの上で音楽を聴いてる感覚が拭えなかった。

昔CDを並べていた棚みたいに、自分だけのコレクションが欲しかった。タグをつけて、自分のペースで積む。そういう静かで個人的な場所を、自分で作ることにした。

ロゴは、まっすぐじゃない。

Ateli.erはフランス語で「アトリエ」、作業場のこと。マークにしたのは、手描きの菫(すみれ)。少し歪んで、少し不完全。

文字(ワードマーク)も、定規を使わず手で書いた。きれいに整えすぎないことが、この場所の約束みたいなものだから。

WHY花は、数字で測れない。だから選んだ。「まだ途中(still unfinished)」でいい、というしるし。
手描きの Ateli.er ロゴ(ワードマーク)
手で描いた Ateli.er のロゴ。まっすぐじゃない一筆。
花は、数字で測れない。

いいねも、フォロワーも、消した。

SNSの当たり前を、全部やめた。いいね数もフォロワー数も、前面に出さない。

詰まった数字を消したら、誰も使わないかもしれない。正直、怖かった。

でも、見せたかったのは他人の数字じゃなくて、他人の選択そのものだった。数字を消して初めて、「選び方」が主役になった。

Ateli.er の Feed 画面 — no algorithm, no ranking, just chronology
実際の Feed。「no algorithm, no ranking. just chronology.」

コレクションが、消えた。

ある日、ユーザーが積み上げたブロックがまるごと消える事故が起きた。キュレーションが主役のアプリで、コレクションが消える。最悪だった。

詰まった「積み上げてきたもの」が消える。これは絶対に、二度と起こしてはいけない。

原因を潰して、多重のセーフガードと復旧の手順を作り込んだ。安易な自動リロードは禁止。データは、何があっても守る側に倒す設計へ変えた。

同期の、沼。

複数のデバイスで使うと、古いデータが新しいデータを上書きすることがあった。せっかくの編集が、巻き戻る。

詰まった「さっき直したのに、戻ってる」——一番わかりにくくて、一番いやなバグ。

引っ張る前に必ず送る(pull前にpush)、画面に戻った瞬間にも送る。visibilitychange まで面倒を見て、ようやく巻き戻りを止めた。

画像が、汚い。重い。

コレクションが美しく見える場所にしたい。なのに、ある経路の画像がそもそも表示されない(MIMEが壊れてた)し、出ても重かった。

学び画像プロキシを一枚かませて正規化。7.6MB → 508KB。表示も速く、崩れも消えた。
7.6MB · 崩れる 508KB · くっきり
プロキシで正規化。軽く、綺麗に。コレクションが映える場所へ。

急かさない場所を、作る。

Ateli.erには「Courtyard(中庭)」がある。タイムラインもバズもなく、ただ静かに、誰かのチャンネルが並んでいる

music, video, image, URL——「これだ」と思ったものを、フィードじゃなくチャンネルに積む。CONNECTは、フォローでもいいねでもない、共鳴の静かな印

Ateli.er の My Channel 画面 — チャンネルにブロックを積む
実際のチャンネル。音楽も画像も、ひとつの場所に静かに積み上がる。

みんなの場所に、した。

最初は招待制だった。でも、静かな中庭は誰にでも開いていいと思い直した。招待制をやめて、誰でも登録できるように。

裏では、データの持ち方をDB-firstへ移して、どのデバイスからでも自分のコレクションが戻るようにした。派手じゃないけど、これが土台。

中庭を、育ててる。

「なぜかここに長くいてしまう」と言われることがある。理由はたぶん、急かされないからだ。通知もタイムラインもない。ただ、誰かが丁寧に選んだものが、静かに積み重なっている。

琵琶湖のそばで、この中庭を育てている。まだ途中でいい。それが、この場所のルールだから。

菫(手描き) 犬(手描き) 鳥(手描き) 顔(手描き) 絵を描く人(手描き)
ロゴも、イラストも、ぜんぶ手描き。— 木下

あなただけの中庭を、持とう。

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no algorithms · no rankings · no like counts

木下 貴博 — 木下スタジオ / 滋賀

書いた人 — 木下 貴博 / Takahiro Kinoshita

木下スタジオ(kinoshita studio)代表・木下貴博。滋賀・琵琶湖のそばで、デザインも開発もひとりでやってます。
BMBoard・Ateli.er・KODOCO を個人開発。プロフィール → / 設計の話も読む →