滋賀で暮らしていると、琵琶湖はいつもそこにある。けれど、その静けさが何でできているのかを、私はうまく説明できなかった。水温、透明度、水中を伝わる音の速さ、渡り鳥の飛来数——湖は無言のまま、膨大な数値を抱えている。その沈黙を、9枚のデータビジュアライゼーションに翻訳しようとしたのが BIWAKO SILENCE だ。
出発点:いちばん近くにある、未知
湖のほとりに住んでいながら、私はこの水について驚くほど知らなかった。観光地としての琵琶湖ではなく、ひとつの大きな生命系としての琵琶湖を、自分の手で確かめたかった。けれど湖は語らない。だからこそ、語らないものに耳を澄ますための道具として、データを選んだ。
設計の核心:静寂を、数値の美しさへ
このプロジェクトの軸は、湖が持つ静寂と豊かさを、数値の美しさとして翻訳することだった。水温の年周期、季節で変わる透明度、水中の音速、そして渡り鳥の飛来数——性質の異なる指標を、それぞれにふさわしい視覚言語へ落とし込み、9枚のビジュアライゼーションとして並べた。グラフを正確に読ませることより、見た瞬間に湖の呼吸が感じられることを優先した。
湖は何も言わない。
けれどデータは、その沈黙の内側の豊かさを、静かに語り出す。
気づき:可視化は、関係をつくる
作りながら気づいたのは、データに触れるほど、湖が「風景」から「関係を結ぶ相手」へと変わっていったことだ。透明度の数字を一度見てしまうと、次に湖面を眺めるときの目が変わる。可視化とは情報を伝える行為であると同時に、対象との距離を縮める行為でもあった。
学び:身近なものを、もう一度知る
BIWAKO SILENCE は派手な発見をめざしたプロジェクトではない。むしろ、あたりまえにそこにあるものを、もう一度ていねいに知り直すための試みだった。静けさは空っぽさではなく、見えない豊かさの別名だ——湖のデータは、そのことを私に教えてくれた。
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