全面に均一にかけた版は、機械が一回で出した絵に見える。網の型を原寸で並べて検証すると、手で作られた版は同じ処理の中に必ず変化を入れている。左から右へ色味を変える。丸の黒い部分も同じ形を並べない。単純に見えない作り方を、3か所で測った。
この研究を一言でいうと──全面にかける処理に崩す軸を1つ足して、機械が一回で出した絵から抜ける記録。
手で作られた版が崩している3か所
| 処理 | 均一にかけると | 手で作られた版の崩し方 |
|---|---|---|
| 網点 | 全部おなじ黒。コピー機の出力 | 左が緑がかった灰 #3f574c、右が黒 #293230。左右で色が変わる |
| 目の中の丸 | 同じ形を色ごとにずらす。版ズレの見本になる | 黒丸6個の大きさと位置がばらばら。1個ずつ違う色の円が、中心をずらして重なる |
| 文字 | 書体を置くだけ | 縦を78%に潰す。字が横に詰まって、重く強くなる |
どれも手間としては小さい。それでも「単純ではない」印象が出る。
同じものが2つあるときは、同じに作らない
球の型で検証した。同じ関数に同じ値を渡して2つ作ると、同じ球が2つ並ぶ。だが球は角度で見え方が変わる。2個の球が同じことはない。実物の2つは、次の4点で別物である。
| 上の球 | 下の球 | |
|---|---|---|
| 材質 | 不透明(鏡) | 透明(ガラス) |
| 角度 | 見下ろす | 横から |
| 構造 | — | 周りに輪がある |
| 光 | 2つ | 3つ |
角度・材質・構造を引数にして、同じコードから別の物が出るようにした。処理だけでなく、物の個体差も要る。
網点の黒にだけ色を載せる
- 乗算だと、白い紙まで濁る。
- カラーだと、黒は動かない。彩度も明度も 0 だから。
- スクリーンなら、黒+色はその色、白+色は白のまま。濃い所だけに色が付く。
質感は文字にもかける
印刷物の文字は網点になっている。文字を置いてから網にかけるからだ。きれいなベクターの字が上に乗っていると、そこだけ別の紙に見える。文字のまとまりを1枚にしてから質感をかける。ロゴも同じ。絵に質感、文字は素のまま、がいちばん見破られる。
粒は、形より隙間で効く
鋳 CHU に粒の形を足したとき、円でも星でも段でも、ほとんど同じ絵になった。粒が重なって並んでいると、形は外側の輪郭にしか出ない。中の形は塗りに飲まれる。同じ字・同じ升目で、はみ出しだけを変えて測った。
| はみ出し | 円・星・段の差 |
|---|---|
| 1.42(升目が隙間なく埋まる倍率) | ほぼ同じ |
| 1.00(粒が接する) | 星がはっきり星に見える |
| 0.70(粒が離れる) | 完全に別の書体 |
質感を足すとき、増やすべきは形の種類ではない。粒どうしの関係である。間隔、大きさの散らし、重なり方。重なったまま濃さを効かせても網にはならず、にじみになる。濃さの段階が2〜3しか出ないので、網点として読めない。
全面の処理を入れるときの原則
- 崩す軸を必ず1つ足す。色を左右で変える、大きさをばらす、縦横比を変える。
- 文字にも同じ質感をかける。
- 粒の道具では、まず粒が離れているかを見る。重なっているなら、形の話をしても効かない。
- 見せる前に、効きが濃い側の値で並べる。既定値のままだと、いちばん効かない所で判断することになる。
- 主役の位置は計算で置かない。飾りを全部飛ばした版を書き出して、そこから測る。計算で置いた版は4回とも外れた。
いま手元にある全面の処理には、崩す軸がいくつ入っていますか。
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