写真を絵画に見せる。言葉にすると簡単だが、定石どおりの仮説は二度とも外れた。狙いの画面を測ると、定石の反対が出た。絵画に見える手順と、「絵の具のような色合い」の中身を、外れた数字ごと示す。
この研究を一言でいうと──写真を絵画に寄せる手順と色合いを、画素を測って言葉にする記録。
外れた2つの仮説
- 紙面全体を測った。白い紙が大半なので彩度が 11〜32 と出て、彩度を落とすのが正解だと読んだ。絵の部分だけを切り出して測ると、彩度は 59〜106。むしろ高い。測る範囲は絵の枠で切る。
- 重ねればいいと読んだ。出どころの違う絵を8枚重ねたら、彩度は 13.8。色が死んだ。ただ重ねるだけでは絵画にならない。
正体は5手。順番が全部
| 何をするか | 効く数字 | |
|---|---|---|
| ① 面を平らに | ぼかさずに領域に割り、その中を1色にする。領域は自分の色のまま | 局所σ 8.6 → 1.4 |
| ② 境に縁 | 領域の境だけを、暗く(または白く)細い線にする | 輪郭が残る |
| ③ 中にムラ | 低い周波の斑と、細かい粒。無いと機械の絵 | 色数 5 → 1000 |
| ④ 消去 | 大きい領域をいくつか選び、暗い1色で潰す | フィルターと絵画の分かれ目 |
| ⑤ 繰り返す | ①〜④を、処理済みの絵にもう一度。2〜3周で写真から離れる | 彩度 99 → 145 |
彩度は落ちずに上がる。足すより、捨てる場所を選ぶのが絵画である。消去と繰り返しが無いと、ただの切り絵のフィルターで終わる。フィルターをかけ、消去し、繰り返し編集する。この3つで一組である。
測る物差しは4つ
色数(8段に量子化して数える)、面の平らさ(5×5 の局所σの中央値)、輪郭(勾配の上位1%)、彩度。この4つで、絵画に寄っているかが出る。
| 色数 | 平らさ | 輪郭 | 彩度 | |
|---|---|---|---|---|
| 対象 時計 | 858 | 6.80 | 222 | 59.4 |
| 対象 菱形 | 1236 | 1.36 | 157 | 106.5 |
| 元の絵 | 726 | 8.63 | 112 | 75.8 |
同じ本の中には、もう1つ別の操作もあった。形から距離を出し、等高線ごとに色を当てる。黒、緑、赤、黄土の同心の帯に、白い細い縁。平らさ 1.36、彩度 106 で、輪郭は弱い。こちらは①〜⑤とは別の道具になる。
「絵の具のような色合い」は明度の幅
「まるで絵の具のような、描いたような色合い」を狙う版で、定石どおり彩度を上げ、影を青緑に、光を暖色に寄せた。画素を測ると、答えは真逆だった。
| 測った場所 | 狙いの画面 | 定石の版 |
|---|---|---|
| 主役の顔 | 明度 174・彩度 0.321・色相 34° | 明度 38・彩度 0.824・色相 152° |
| 巨大顔の肌 | 明度 184・彩度 0.104 | 明度 89・彩度 0.918 |
| 3人の顔 | 明度 171・彩度 0.290 | 明度 20・彩度 0.918 |
狙いの画面の顔の明度は、5%点が 18、95%点が 197。暗部だけ深く締まって、顔の面は明るく飛ぶ。中間は潰さない。色が付いているのは髪と服だけで、肌は肌色のまま。人物まるごとに色を掛けると肌まで染まり、絵ではなく着色した写真になる。
- ① 入力の白を下げる(230 から 180 前後へ)。γ も上げる。γ だけでは届かない。
- ② 彩度は上げない。目標が 0.29〜0.32 なら、+10 で足りる。
- ③ カラーバランスはひと桁台。影だけ寒色、光はほぼ素のまま。
- 色相を 60° 以上動かすときは、べた塗りを描画モード「カラー」で乗せる。カラーバランスは ±100 でも数十度しか動かない。
引きすぎると、今度は灰色の霧になる。彩度を -68 まで引いたら、背景の大きな顔が彩度 0.144 のシアンになった。目標の同じ場所は彩度 0.445 の紫だった。
空気は背景に、主役と字ははっきり
- 背景・群像・火の粉は、奥行きを振って空気を着せる。
- 主役の人物は、奥行き 0、空気 0〜0.25。
- 字は空気 0。主役よりさらに手前。
主役にも空気を 1.0 着せたら、人が光に飲まれて消えた。にじみやハレーションを足すと、顔のばらつきは 23 から 16 まで潰れた。馴染ませるつもりが、消していた。明るさの平均では光と顔を見分けられないので、顔の帯の標準偏差で見る。人が入っていれば 24〜45、消えていると 10 ほどになる。
次に「絵みたいに」と言われたら
- まず狙いの画面の同じ場所を、明度・彩度・色相で測る。定石は測ったあとに当てる。
- 場所は分けて測る。顔の肌、顔の周り、服、下の方。全体の平均は人物と地が混ざって、必ず読み違える。
- 対象は作品の枠で切ってから測る。
あなたが「絵みたいだ」と感じる1枚は、明度の幅がどれくらいありますか。