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視覚の体験 — Handmade Line

手書き感は手で打っても出ない

2026.10 Line / Brush

手で描いた線には、揺れと切れがある。ベジェの点を手で数個打った曲線は、どう揺らしても角が丸いだけの幾何になる。幾何でも手書きでもない、いちばん中途半端な形だ。だから線は手で打たない。計算で組む。

この研究を一言でいうと──手書きらしさは手で打たず、揺れの幅と線の太さの比から組む。

同じ丸を、揺れの幅と線の太さの比を0、0.3、1.0、3.0と変えて描いた図。1.0で手で描いた線に見える
— 揺れの幅 ÷ 線の太さ(ノートの数字から描いた図)

一画を「中心線と太さの列」として組む

線を1本の stroke として引かない。左右のふちを閉じた塗りにする。段は6つある。

何をするかどのつまみになるか
①骨を張力つきのスプラインで通す張力を0に近づけると角が立つ。これが切れ味
②弧の長さで等間隔に取り直す—
③中心線を法線の向きに、低い波で揺らすふるえ
④太さを sin の山で作る。両端を細く入り抜き。終わりが点で終わると切れる
⑤向きによって太さを変える抑揚。平ペンを傾けて持った太細
⑥終わりから接線の向きに伸ばして消す跳ね

一画ごとに別の種(seed)を使う。同じ字を二度描いても同じ形にならない。手書き「風」で止まらず、本当に不揃いになる。

決めるのは「揺れの幅 ÷ 線の太さ」

Photoshop で丸を描き、手ブレの量を変えて並べて測った。手書きらしさを決めるのは、揺れの幅を線の太さで割った比ひとつだ。

比見え
0機械の丸
0.3少し歪んだ丸。まだ機械の絵
1.0手で描いた線に見える
3.0崩れる

線が「切れる・膨らむ」のは、1本の線を揺らしても出ない。内の縁と外の縁を別々の種で揺らすと出る。縁どうしが近づいた所で線が痩せて消え、離れた所で膨らむ。2本の縁の差を塗る。螺旋を描く途中で偶然できた手書きっぽい線も、正体はこれだった。揺れが ±3px に対して線が 2.5px しかなく、揺れに負けて切れていた。

比1.0の丸を2つ並べた図。左は低い波だけで手ブレに見え、右は細かい波を混ぜてノイズに見える
— 低い波だけを重ねる

揺れは低い波だけを重ねる。sin の k=2、3、5、7 まで。8 以上を混ぜると手ブレでなくノイズになる。人の手は速く震えない。

Photoshop では、パスを作ってブラシでなぞる。太さのゆらぎとかすれは、パスを短い区間(28個)に分け、区間ごとに径を変えて引く。たまに引かない区間を作る。

ひと筆は毛を並べて引く

ブラシで組むポスターを作ったとき、丸筆1本を太くしても筆跡にならなかった。のっぺりした角丸の棒になる。細い線を等間隔に並べると、今度は櫛に見える。本物の筆跡は、芯は繋がっていて、割れるのは縁だけだ。

幅120pxを14本の毛で引いた筆跡を、毛の太さの倍率1.0、1.45、1.9で比べた図
— 毛の太さ =(幅 ÷ 本)× 倍率
倍率見え方
×1.0 以下櫛。線が1本ずつ独立して見える
×1.45芯だけ繋がって、縁が割れる
×1.9 以上板。全部埋まって筆に見えない

境目は画素で測って出した。そのうえで3つ足す。

筆跡を作るときは、幅・毛の本数・毛の太さの3つに分けて持つ。質感は形を増やしても出ない。隙間の作り方で出る。

濃さは、ひと筆ぶんに掛ける

なぞった線分ごとに濃さを足していくと、ゆっくり引いただけで真っ黒になる。同じ 0.5 でも、速く引けば薄く、遅く引けば濃い。それではつまみが値を持っていない。

Photoshop と同じ振る舞いになる。靄 MOYA のレイヤーマスクで測ると、組み直してもひと筆 0.2〜0.3ms だった。

必ず踏む不具合

かすれは、相手を見て足す

かすれは厳粛で伝統的な方へ振れる。気軽さや新しさを求めている相手には逆に効く。手の跡は残して、なめらかで太い一筆にとどめる方が、効く範囲が広い。細い筋が何本も並ぶ見えは、墨より、彫った線やなぞった線に読める。そこは使える。

あなたが手で引いた線は、揺れの幅と太さの比でいうと、いくつくらいだと思いますか。

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