使える素材は、自分で刷った文字の一覧が1枚と、白い画用紙だけ。この制約で作品を組む。字を切り抜いて貼る。始める前に、まず在庫を数える。
この研究を一言でいうと──135字・各1枚きりの在庫から、組める言葉を数えて探す記録。
手元の在庫
- 自分で刷った文字の一覧が1枚。ヒラギノ明朝 W6、黒1色。
- 升 18.2mm、字 14.4mm。13cm の枠に横7字で刷ってある。
- ひらがな46、カタカナ46、A〜Z 26、0〜9 10、゛゜ー!?・、で 135字。
- どれも1枚ずつ。もう刷れない。同じ字は1回しか使えない。
- 無いもの。漢字、小さい字(っゃゅょ)、ゐゑ、英小文字、句点、かぎ括弧。
- 濁点と半濁点も1枚ずつ。濁音は1回しか使えない。
ほとんど何も組めない
| 組みたいもの | 結果 |
|---|---|
| 99LETTERS | 組めない。9・E・T が2枚ずつ要る |
| HONYAKU ENSOU | 組めない。O・N・U が2枚 |
| BIWAKO SILENCE | 組めない。I・E が2枚 |
| Translate the unspoken. | 組めない。T・E・N が3枚 |
| あめんぼあかいなあいうえお | 組めない。あが3枚、ぼが無い |
自分の屋号すら組めない。これがこの紙の正体である。
数えるのは機械でやる。目では数え落とす。濁音と半濁音は、素の字と ゛゜ に分けてから数える。「ド」を1字として数えると、濁点の在庫切れを見落とす。
いろは歌 ── 二字たりない
最初の候補は、いろは歌。
- 47字で、同じ字が1つも無い。「同じ字は1回だけ」という制約と、構造が同じ。
- シートのひらがな46字のうち、使うのは45字。余るのは「ん」だけ。
- 足りないのは「ゐ」「ゑ」の2字だけ。
- 濁点を一切使わない。濁点が1枚しか無いことと噛み合う。
- 7字×7行で 127.4mm 角。シートが13cm の枠に横7字で刷ってある。
ゐゑは足さずに、欠けたまま出す。2升だけ紙の白が残る、その2升を切り抜いて穴にする、トンボだけ残す。見せ方の候補も3つ出した。
それでも外した。日本風すぎる。いろは歌は素材まで和になる。噛み合いが良くても、素材の出どころが自分の芯と食い違うなら外す。不採用の記録として残しておく。
エンドリケリー ── リが一枚たりない
代わりに選んだのは、古代魚エンドリケリー(Polypterus endlicheri)の名前だった。
| 表記 | 結果 |
|---|---|
| エンドリケリー | 「リ」が2枚要るが1枚。足りないのはこれだけ。ド=ト+゛は足りている |
| エンドリケリ | 同じく「リ」が2枚 |
| エンドリ | そのまま組める(4字) |
| ポリプテルス | 「゜」が2枚要る |
| ENDLICHERI | E・I が2枚ずつ |
| POLYPTERUS ENDLICHERI | P・L・R・I が2枚、E が3枚 |
足りないのは、たった1字。
埋め方は4通り
- ① ひらがなの「り」を混ぜる。エンドリケりー。手元でそのまま作れる。
- ② 2つ目を空ける。欠けを見せる。ただ、7字のうち1字が空くと、47字のうち2字より穴が目立つ。
- ③「エンドリ」で切る。4字。飼う人は実際にそう略す。いちばん引いた形。
- ④「リ」を作字する。シートの「ー」を縦にして2本、長さを変えて切る。明朝の「リ」は右の縦画の下が左へ跳ねるので、切っただけでは跳ねが出ない。
①がいちばん強い。同じ音を2つの文字で書く。並べると、ほとんど気づかない。外来の魚の名前を、ひらがなが1字だけ支えている。
組みの寸法
| 組み方 | 大きさ |
|---|---|
| 7字×1行 | 127.4 × 18.2mm。シートの「13cm 枠に横7字」にそのまま入る |
| 4字×2行 | 72.8 × 36.4mm |
| 2字×4行 | 36.4 × 72.8mm。縦組み |
| 1字×7行 | 18.2 × 127.4mm。細い縦の帯。魚の細長い体に合う |
切った跡も画面のうち
写真の時点で「い」「イ」「ナ」がもう切り抜かれていて、紙に穴が空いている。その穴は隠さずに使う。この1枚から取ったことが、絵に残る。
外に出すときの権利
他人の歌詞を切り貼りして作品として発表すると、権利の問題が出る。いろは歌は平安期の作で、著作権は無い。古代魚の一般名も同じ。ただ、同じ言葉が人やグループの名前と重なるときは、外に出す前に確かめる。
あなたの名前は、この135字で組めますか。
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