日本の映画ポスターは、文字と色をどう置いているのか。好みで語ると話がぶれる。だから画素から出てくる決まりだけを拾う。母集団は、公開されている邦画のポスター222点。そのうち縦位置で400px以上の81枚を、機械で測った。ポスターの画像はここには載せず、測った数字だけを置く。
この研究を一言でいうと──映画ポスター81枚を画素で測り、組むときの決まりを数字で拾った記録。
黒があるかどうか
彩度55を超える画素、明度25%未満の画素、残り。この3つに塗り分けて数えた。81枚の中央値は次のとおり。
画面のおよそ5分の1が暗部になっている。自分の作った青い型のポスターを同じ物差しで測ると、暗部は0%だった。淡くて眩しい題なので狙いとしては合っているが、重さを出したいなら黒を入れるところから始まる。「それらしく見えない」と感じたとき、原因は色相でも彩度でもなく、黒が無いことが多かった。
彩度は地と頂点の差でできている
| 地の彩度(中央値) | 頂点(98%点) | 差 | |
|---|---|---|---|
| 81枚 | 32.9 | 87.0 | 54 |
| 自分の型 | 19.0 | 70.3 | 51 |
差はほぼ同じだった。全体を濃くしているわけではない。地は中くらいに濁らせ、面積13%ほどだけを振り切る。
赤の世界
1枚ごとに、いちばん多いはっきりした色を数えた。
赤・桃・橙で71%、水と空で21%。青系は少数派になる。いちばん多い色相が画面の色の60%以上を占める作品が、81枚中43枚(53%)あった。半分はほぼ一系統の色で組まれている。
その他の実測値
| 25% | 中央 | 75% | |
|---|---|---|---|
| 地の彩度(中央値) | 13.3 | 32.9 | 44.4 |
| 彩度の98%点 | 67.7 | 87.0 | 94.4 |
| 明度の中央値 | 41.6 | 62.4 | 84.3 |
| 暗部(明度25%未満) | 8.5% | 20.9% | 31.7% |
| はっきりした色(彩度55超) | 2.0% | 13.1% | 24.0% |
はっきりした色を縦のどこに置いているか(面積の中央値)。
中央がいちばん濃く、下がいちばん薄い。下はクレジットや日付の場所なので空けてある。
判型は、縦横比1.41が44枚、1.42が22枚。81枚中66枚(81%)がB判かA判の比率だった。迷ったら 1:1.414 にする。
文字の置き方
数字とは別に、81枚を並べて見て取った決まり。
- 題字は画面の下半分に、横いっぱいの帯として置く。上に置くのは、縦組みの太い明朝のとき。
- 縦組みのキャッチは、画面の端に細く1本。中央には置かない。
- クレジットは画面の12〜18%を占める。削れない前提で場所を取っておく。
- 群像は大きさを段で分ける。同じ大きさで並べず、3〜4段にして奥行きを作る。
- ベタ塗りの色面を1枚入れる。赤や黄の全面の地や帯。写真だけで組まない。
書体:題字は作る、脇は揃える
映画の題字は、ほぼ全部がその作品のために作られた字だった。既製の書体を探しても見つからない。既製の書体が要るのは脇の方になる。
| 場所 | 書体の目安 |
|---|---|
| キャッチコピー(縦組み1行) | 明朝の細〜中 |
| 出演者の名前(横並び) | ゴシックの中〜太 |
| スタッフクレジット | ゴシックの細、7〜9pt |
| 日付・ROADSHOW | 欧文サンセリフ、または和文ゴシックの太 |
脇が揃っていないと、題字が良くても素人っぽく見える。手元の書体を同じ大きさで描いて並べると、ゴシックはヒラギノ角ゴの W0〜W9 で10段あるのに、明朝は2段しかなかった。太い見出し用の明朝は macOS に標準で入っている。足りるかどうかは、実際の1本で判定する。
まとめ
- 色は、地と頂点の差(およそ54)で作る。足りないときは黒を疑う。
- 判型は 1:1.414 が8割。
- 題字は作る。脇の書体を揃える。
あなたが最近組んだ1枚には、画面の5分の1ほどの黒がありますか。